モテたい理由 赤坂真理

モテたい理由 (講談社現代新書)

モテたい理由 (講談社現代新書)

題名だけ見ると恋愛HowTo本っぽいですが、至極マトモな男女論(と言っても、お固い内容ではないです)

モテる努力をしないと生きる資格がない、と言い切れるぐらいに「モテ」がこの世を支配している。みんなモテ、モテ、モテ、モテたいと願い、強迫観念のように願い続ける。「モテ」至上主義に疲弊し、鬱に(もしくはハイパーに)なって、もうダメかも、と思ったりする男と女。なんにせよ生きづらい。

男女どちらも「モテたい」と願っているのに、どちらも相容れず、疲れてしまうのか?↓の部分が印象的だったので引用

男に、好きな女のタイプを聞いてまわったとき、あまりにしばしば出くわす名前があることから、私は考え込んでしまった。誰だと思います?漫画『タッチ』の朝倉南と、『めぞん一刻』の音無響子(管理人さん)
〜(中略)〜
ひるがえって、女が男に求めるものが、びっくりするほど変化してきたことを思うと、男のこの純情っぷりには、涙が出てくるほどだ。女の子たちが自分への掛け金をつり上げてきた結果、買い手がつかなくなって焦ったり捨て値で自分を売りかねもしない今、男の子が女の子に求めているものは、ずっと変わっていないのだ。
まるで、女の子ばかりがモテようと勝手にニュータイプに進化し、超高高度を飛ぶ超ハイスペックステルス戦闘機になったはいいが、地上で投石している男の子を発見できない、そんな感じ。

モテ社会の主役であるべき女性は無用な努力を強いられ、男は変わらない好みにしがみつきながら、女性に「あだち充的」価値感を求め続ける。そんな男女が相容れるわけはなく、男女どちらも疲弊して、鬱(もしくはハイパー)になるとは、なんたる皮肉!!

特に、男女の関係性を女性誌を切り口に描いた部分は興味深い。エビちゃんOLの価値観をとりあげた第4章は、モテ至上主義の象徴とも言うべきCanCam、JJ記事への考察があり、なるほどねぇ、と感心。「モテ=恋愛=関係性」を食い物にする社会、それによる生きづらさ、というテーマは「若者殺しの時代(堀井 憲一郎)」と視点は近いのですかね。

ひとつだけ不満のある点は、最後の章の「戦争とアメリカと私」部分(→ちょっと散漫)。題材は深いので、「アメリカとの関係性」をテーマにして、一冊ぐらい読みたいですな。

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

若者殺しの時代 (講談社現代新書)