マイ・ロスト・シティー
- 作者: フランシス・スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 新書
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『グレート・ギャツビー』に引き続いての村上春樹訳スコット・フィッツジェラルド作品・短編集。
フィッツジェラルドは、「自分は二流の作家ではないのか」という不安に怯えていたという。訳者である村上春樹のエッセイでも紹介されいるが、同時代の作家であるヘミングウェイと比較した彼自身の象徴的。
アーネストは牡牛で、僕は蝶だ。蝶は美しい。しかし牡牛は実在する。
ハードボイルドで"文豪的"なヘミングウェイ。それに対して、都会的・現代的な描写をするフィッツジェラルドは"流行作家"という風情。文豪的「重さ(=牡牛)」と対比した、流行作家的「軽さ(=蝶)」が彼自身のコンプレックスの一因だったのか。現代においても、「ケータイ小説は文学か否か」という議論がなされており、それに近いものがあるのかもしれないな、と思う。*1
でもって内容ですが、僕は「氷の宮殿」が好き。地域性(南部と北部)とコミュニケーションがテーマで、日本人にとってはいまいち想像しづらい内容ではあるのですが、北部にやってきた南部出身の女の子が感じる「北部の寒さ→人間の冷たさ」に関わる描写は、引きつけられる。