『熊を放つ』ジョン・アーヴィング(村上春樹訳)

熊を放つ〈上〉 (中公文庫)

熊を放つ〈上〉 (中公文庫)

熊を放つ〈下〉 (中公文庫)

熊を放つ〈下〉 (中公文庫)

ジョン・アーヴィングの処女作。村上春樹訳、ってことでハルキストとして読んでみました。ロードムービー的な青春小説なのでしょう。冗長な感じは否めませんが、アーヴィング的(春樹的?)な言い回しは満載。

青春は爆発、なのだ。青春中毒の僕としては以下のような文章が読めたので満足。

ジギーは葉っぱを土に植えた。
「ちゃんと育つかな?」と彼は言った。
「どんなことだって可能さ、ジギー。」
「そうだよな、どんなことだってな」と彼は言った。
 【セイウチのいるところ】

「ジギー、君をとらえるために聖レオンハルトで道路が封鎖されているぞ!」
「封鎖されているのは君の頭の方さ」と彼は言った。
 【上り坂下り坂・こちらまたあちら】

いやー、こうやって文字にすると恥ずかしい。夜中に思い出して赤面する感じ。訳者である村上春樹氏もあとがきで以下のように語っています。

僕はこの『熊を放つ』のページからたちのぼってくるむせかえるような青年期の「想い」、混乱して未整理な部分もあるにせよ、それだけにかえってリアルにそのもどかしさを伝えてくれる「想い」に強く引かれてしまうのである。

処女作にしか見出せない魅力、とはやはりこのような荒削り感、パワー、疾走感、といったところですな。